top of page
Manabu

15th Deep-Sea Biology Society@Monterey


先週まるっと1週間、国際的な深海生物学会DSBSに参加してきました。

メインのホストが今のラボのボスDr. Steven Haddockなので、僕もポスターでいいから発表すべきだということを5月頃に伝えられ・・・

研究開始半年で何を発表するのだろう。

それなりに自分を追い込めば、なんとかなるもので、一応形にはなりました。

MBARIでのプロジェクトのうちの一つ。(最も無謀なもの)

「新しい深海発光生物の発光メカニズムの解明」の進捗について発表しました。

DSBS-Manabu-Poster

海には発光生物がどれくらいいるのか?

Severine Martini & Steven Haddockらの研究により、海にいる動物の4分の3は発光生物らしい。(Martini & Haddock 2017, 注1)

そのうち、ざっと分けた場合、約31の分類群が発光するが、それらのうち、ルシフェリンの構造がわかっているものは半数程度である。深海に限って言えば、セレンテラジンしか構造決定されているルシフェリンはない(注2)。

また、ルシフェラーゼ(酵素)の遺伝子が見つかっている分類群は8つだけである(Haddock 2010)。

地球最大の生物生息可能領域である海洋(体積で99%)に生息する76%が発光するにもかかわらず、そのうちおよそ半分の分類群がどのような分子を使って発光しているかは全くわかっていない。

にもかかわらず、これらの発光の分子メカニズムを研究しているのは世界中で僕しかいないことが、今回学会に参加してわかりました。

なぜこんなに少ないのか。

それは、サンプルの入手が困難だから。

例えば、ホタルのルシフェリンの構造決定をしたMcElroy 博士は、山のようにホタルを集めました。

ノーベル賞を取った下村脩博士はオワンクラゲを25年間毎年5~8万匹取っていました。

最近でも例えば、ロシアの研究グループがヒメミミズのルシフェリンの同定に到るまでには、太さ1 mmにも満たず、長さも2-3 cm程度のヒメミミズをバケツいっぱい集めるのに5年間を費やしています。

さて、過去の深海調査といえばトロールネット(地引網)が唯一の手段でした。

これは、重りをつけて沈めた巨大な網を沈め、船で引っ張ることで、ある深さのプランクトンもしくは底生生物をごっそり取ってくるという方法です。

これで捕まえられた生物は相当痛めつけられています。

特にクラゲのようなgelatinous な(ゼラチンのように柔らかい)動物はほとんどが原型を止めていなかったり、ボロボロになっていて、もはや発光するための元気は残っていません。

例えるなら、高速道路で、車の窓から虫取り網を出して、走り続けるようなもの。

カブトムシのような硬い体の生き物なら耐えれるでしょう。チョウならボロボロになってそうですか?

例えばそこに高野豆腐を入れたのを想像してみてください。

30分後にはだし汁が飛び切ってると思いませんか?表面も網の跡がついてボロボになっていそうじゃないですか?

また、勢いよく引き上げられるため、水圧の変化に耐えられない生物もたくさんいます。

これは、硬い骨や鱗を持つ魚にも当てはまります。深海魚といえば、浮き袋が口から出てるような画像がネットでよく見かますが、これはそのためです。

MBARIやその他の海洋研究施設では ROVやHOVと行った研究用潜水艦を使うことで、深海生物をかなり状態良く持って帰ってくることができます。

しかし、一回、1週間の航海で200サンプル程度が限度。同じ種が取れるのは、特に大発生している種でなければだいたい5匹くらいです。

材料の供給量がものを言う天然物科学の世界では、この条件は果てし無く無謀なものと言えるでしょう。

これが、誰も研究したがらない理由です。

話は逸れましたが、今回の僕の発表を簡単にまとめると、MBARIのROVを使って採取してきた深海発光生物を使って、色々な実験をして、どのように試験管内で(in vitroで)発光を再現できるかを試す、と言うものです。

その結果、いくつかの種では鉄イオンと過酸化水素の存在下で光るのではないかと言うことが見えてきました。

問題は、今後、これを使って発光物質を精製するためにどれくらいの量を集められるかです。(Julyのクルーズでは二匹取れました!!)

続く・・・

閲覧数:191回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page